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そのプラスチック製容器包装、ごみじゃなくて資源です~リサイクル工場から伝えたいこと
そのプラスチック製容器包装、ごみじゃなくて資源です
~リサイクル工場から伝えたいこと
■プラスチック製容器包装のリサイクルで、環境問題の改善に貢献
私たちの生活に欠かせないプラスチック。軽くて丈夫、密閉性・耐久性に優れるなどさまざまな利点があり、容器包装に適した素材として利用されています。しかし一方で、使用済みプラスチックが海洋の環境を汚染するなど、世界的な問題を引き起こしています。
プラスチックの排出量削減やリユース、リサイクルは、今、世界中の国々が力を入れています。日本でも、国を挙げてさまざまな取組みが進められています。たとえば、2020年7月から小売店で使われるプラスチック製レジ袋が有料化されたのもそのひとつ。また、使用済みプラスチックがさまざまなかたちでリサイクルされています。
今回のWNNでは、使用済みプラスチック問題の改善に貢献するリサイクルが、どのように行われているかについてご紹介します。私たちが出すプラスチック製容器包装が、再びプラスチック製品に生まれ変わる現場を取材しました。
■プラスチック製容器包装のリサイクル工場では、こんなことが行われています
今回取材に訪れたのは「J&T環境 仙台工場」。ここでは、①ベールの製造、②プラスチック再生処理、③パレット製造、という3つのステップで、プラスチック資源の受入れから最終製品の製造まで、一貫したリサイクル事業を展開しています。ワンストップでリサイクルできる施設は数少なく、しかも年間約1万3,000トンもの量を処理できる施設は全国でここだけという、オンリーワンの特徴を持つ施設です。
では早速、リサイクルの手順を見ていきましょう。
①ベール製造
ベールとは、使用済みプラスチックを選別・圧縮・結束梱包したもので、再生プラスチック製品の原材料となります。同工場で製造するベールの原料は、仙台市内の家庭から排出されたプラスチック製容器包装です。仙台市民なら「週に1回出す赤い色の指定袋」と言われるとピンとくるでしょう。この袋は収集車でごみ集積所から回収され、工場の受入れヤードに持ち込まれます。
持ち込まれた指定袋は機械で破いて中身を出し、軽いフィルム系プラスチック、重いボトル系プラスチックに分けられ、2本のベルトコンベヤに進みます。その先には係員が待機しており、リサイクルに向かない不適物や、口が結ばれて中身が取り出せないレジ袋などを手作業で取り除きます。その後、フィルム系、ボトル系それぞれが種類別に圧縮梱包されます。これでベールの完成です。
②プラスチック再生処理
次は、再生プラスチック製品の原料の製造です。一口にプラスチックと言ってもその種類は実にさまざまで、ベールの中にもさまざまな種類のプラスチックが含まれています。これを、リサイクルの用途によって種類分けしていく工程です。
同工場では、再生プラスチック製品としてパレットを製造しています。原料となるのは、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の2種類のプラスチックです。光学選別機という機械を使って2種類を選別し、パレットの原料となる「PE・PP混合減容品」を製造します。
ちなみに、回収されたプラスチック製容器包装の中からパレットの原料(PE・PP混合減容品)となるのは、全体の50%とのこと。残りの50%は、発泡スチロールなど材質ごとに分別して別のリサイクル施設に出荷するほか、高い発熱量という特性を活かし固形燃料として出荷されます。
③パレット製造
いよいよ最終製品であるパレットの製造です。PE・PP混合減容品を220℃まで温度を上げてドロドロに溶かし、射出機で一気に金型へ流し込んで押し付け、60℃まで冷え固まったところで取り出します。すぐに手作業で不要な突起(バリ)を取り、滑り止めを取り付けて完成品が出来上がります。
完成したリサイクルパレットは、腐食のしにくさなどから化学製品や海外向け製品の出荷用を中心に安定した需要があります。月に約3万枚を製造し、さまざまな企業や事業所などに出荷・販売しています。
■私たち一人ひとりが「リサイクルプラスチック原料」の提供者です!
使用済みのプラスチック製容器包装が再び製品に生まれ変わるまでの工程を見学すると、痛感させられることがあります。それは、私たちが指定袋に入れて排出している中身が、リサイクル工場での作業効率や、再生プラスチック製品の品質を左右している、ということです。
それが特にわかるのが、①ベール製造の工程のひとつである、手作業による不適物の除去です。この工程では、ベルトコンベヤに乗って流れてくるものの中から、リサイクルに向かない不適物を係員が手作業で取り除いています。その中には、口が結ばれて中身が取り出せないレジ袋、ドレッシングなどの中身が入ったボトル、明らかにプラスチックではないものまで含まれていました。
さらに、危険な不適物まで混入していることもあります。注射針がついたままの注射器で、係員がケガをする恐れがあります。またリチウムイオン電池が混入すると、収集や処理の工程で発火し、火災が起きる恐れがあります。近年、リチウムイオン電池が原因の火災が全国的に増えており、昨年は300件もの発煙・発火トラブルが報告され大きな問題となっています。
こうしたことを踏まえて、仙台市では、市民の皆さんにプラスチック製容器包装を排出する際にお願いしたいこととして、以下のとおり呼びかけています。
- プラスチック製容器包装以外の不適物、特に注射針やリチウムイオン電池は絶対に入れないでください。
- 汚れているものは、軽くすすいで汚れを落としてください。
- レジ袋などの小袋に入れる時は、口を結ばないでください。
私たちが出した使用済みプラスチック製容器包装を原料に、ものづくりが行われています。赤い色の指定袋に入れてごみ集積所に出した先に、リサイクルに携わる人がいます。このことを忘れずに、思いやりのある出し方を心掛けていきましょう。
■新型コロナウイルスの影響で、家庭からのプラスチック製容器包装の排出量が増加!
ところで、今年は新型コロナウイルスの影響で外出自粛期間が設けられたことにより、家庭から出されるごみの量が大きく増加しました。プラスチック製容器包装についても、4月は+10.8%、5月は+5.5%、6月は+11.3%と、前年度を超える比率で量が増えました。7月のレジ袋有料化の影響か8月は前年度より減少しましたが、9月には再び増加に転じています。
排出量が増えた月は、同工場では土曜日の稼働を増やしました。これにより、なんとか受入量の増加に対応した、ということです。
■食品ロス削減に向けて、バイオガス発電を行う会社が工場稼働の準備を進めています
最後に、取材先のJ&T環境が関わる食品ロス削減のしくみについてご紹介しましょう。同社を含む4社が共同して、「東北バイオフードリサイクル」という会社を設立しました。食品廃棄物を微生物により発酵し、発生するメタンガスを燃料に発電を行う「バイオガス発電」を行います。
原料となるのは、東北・北関東一円から出る事業系食品廃棄物。エキナカから発生する廃棄食品や調理残さ、食品工場などから発生する賞味期限切れの食品などです。これらを使ったバイオガス発電により、一般家庭の約1,500世帯分(年間想定発電量約6,500MWh)の発電量を見込んでおり、発電された電気は売電によって近隣地域で消費される予定です。工場は今年9月に着工。2022年春の操業開始を目指し、着々と準備が進められています。本事業は食品リサイクル率の向上、再生可能エネルギー創出による脱炭素社会構築と地域循環型社会に貢献されるものと期待されています。
※本記事が掲載されていたモッタイナイキッチンは2022年10月にワケルネットへ統合されました。本記事は統合される前にモッタイナイキッチンで公開された情報となります。