2020.09.24
7月からレジ袋が有料化されました。そのことは少なからず、わたしたちの暮らしに影響を与えたのではないでしょうか。と同時に、この背景には環境問題が関係していることも、多くの方が理解していることでしょう。では、「有料化」は販売の現場ではどのように考えられていたのでしょう。
このページでは、株式会社ローソンの残間敏さんに、そんな「気になること」を思いつくまま聞いてきました。「答えるのが難しいな(笑)」と言いながらも、一つひとつ丁寧に答えてくれました。
―7月1日から、レジ袋削減のための有料化が始まりました。個人として、または企業として、そもそもプラスチックごみを減らすために、どのような考えを持たれていたのでしょう。
残間さん
「個人的には海洋汚染のことはずっと気になっていました。しかも、その一因にレジ袋があるということで、なにかできないかと考えていました。コンビニでは、お買い物をしていただくと当り前にレジ袋がついてきました。これを削減するにはどうしたらいいのか、コンビニという立場で考えるのは難しい課題でした。7月から有料化がスタートし、それによってレジ袋の削減につながるのであれば、有料化というやり方は必然だと考えました。」
―社会課題に取り組もうと思っても、いつ、どこから始めればいいのか、悩み、なかなか日々の暮らしの中で実践していくのは難しく思えてしまいます。そうした社会課題を、お仕事の中で取り組んでいくにはどんな進め方があったのでしょう。
残間さん
「弊社の企業理念は“みんなと暮らすマチ”を幸せにする、です。そこから人へのやさしさ、地球へのやさしさ、という考えができてきて、ではどうしていけば、実際にそうなるかを考えて、SDGsに取り組む委員会を立ち上げ、2030年に向けて、具体的な数値目標を掲げました。それに関しては、詳しい内容が掲載してあるハンドブックをつくって、社内及び関係団体等に配布しています。」
―社内でSDGsに取り組む組織が作られたのですね。
残間さん
「そうです。社長が中心になって組織化され、定期的に会議をしたり、紙容器やストローを使わなくても飲める蓋などを開発したりしています。SDGsの意識はそれぞれが持っていたと思いますが、組織化されたことで動きやすくなり、いろいろな企画を実現できるようになりました。」
―ローソンのような大きな企業で、たくさんの店舗も抱えているとなると、SDGsのような意識を共有したり、レジ袋の有料化などの対応を一斉に実施していくのは難しくなかったのですか。
残間さん
「そもそものところの話になってしまいますが、コンビニというのは独立した経営者がいて、その方たちが自分の店舗として、運営していきます。ただ企画などは本部が考え、実現させていきますので、研修やウィークリーレポートなどで商品のことだけではなく、環境問題への取り組み方なども共有していきます。また、社長直行便というのがあって、各店舗のオーナーやクルーたちからの意見を直接聞けるようにもしています。そのような体制をつくることで現場との連携も丁寧に築くことができます。」
―社長直行便!すべての意見に目を通すのですか。
残間さん
「はい。かなりの数になりますが、目を通しています。返信もするんですよ。」
―それは、すごい。やはり、現場の声って大切なんですね。
残間さん
「そうですね。どんな企画でも……たとえば、レジ袋の有料化などでも対応するのは店舗のオーナーやクルーたちなので、そこはやはり大切ですね。お客様の反応をいつも直に見ているわけですから。」
―実際、レジ袋の辞退率はどうなのでしょう。
残間さん
「始まる前、わたしたちは60%位の辞退率かと思っていましたが、実際は75%の辞退率でした。これは事前のアナウンスなどがうまくいっていて、お客様も有料化のタイミングや理由などを共有できていたのではないかと思います。」
―それはメディアも含めてということでしょうか。
残間さん
「はい。こうした社会課題はひとつの企業だけで継続して、しかも効果も出して、となるとなかなか難しいと思います。それこそ、官と民で連携してやっていかないといけないことではないでしょうか。」
―とくに、このコロナ禍の状況を踏まえると、縦や横、いろいろなつながりがさらに必要になってくると思われます。
残間さん
「この状況になり、テイクアウトが増えましたよね。その容器を紙でつくっていくなどの開発にもコストがかかってしまう。そのような課題を乗り越えていくには、いろいろな立場の方との連携が必要になると思います。レジ袋の有料化や紙ストローの導入とか、マイカップ持参などもゴールではなく、通過点です。ゴール、つまり最終目標はプラスチックごみがゼロになるということです。そのゴールにはみんなで向き合っていかないといけないと思っています。」