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食べ物に困る人を支え、食品ロス削減に貢献する~フードドライブ運搬協力事業者の声 有限会社 宮城中央保険

自宅に余っている食べ物を回収し、フードバンク団体等を通して食べ物に困っている人や福祉施設等に届ける活動を「フードドライブ」といいます。フードドライブには、2つのメリットがあります。まだ食べられることができるにもかかわらず捨てられてしまう食品ロスを削減できること。そして、食べ物に困っている人を支援できることです。

仙台市が実施しているフードドライブには、さまざまな人や企業・団体が関わっています。自宅で食べきれなかった食品を寄付してくれる人。寄付された食品を回収してフードバンク団体に運搬してくれる人。運ばれた食品を仕分けして、支援依頼があった人の元へ届ける人。関わる皆さん一人一人の「食べ物のモッタイナイをなくしたい」「困っている人を支えたい」という温かい気持ちが、フードドライブ活動をより活発なものにしています。 今回スポットを当てるのは、この取り組みの中間の流れを担う運搬協力事業者です。仙台市青葉区に拠点を置く有限会社宮城中央保険は、企業の社会貢献活動の一環として2020年からこの取り組みに参画しました。運搬協力を始めたきっかけや活動内容、活動への想いなどを、代表取締役の菅原一良さんにおうかがいしました。

有限会社 宮城中央保険 代表取締役 菅原 一良さん

フードドライブの運搬に協力するようになったきっかけを教えてください。

菅原さん

「もともと、私の母が昔からボランティアをしていたので社会貢献活動は身近なものでした。私自身も業界団体の委員会で社会貢献活動を行ったことで社会貢献への意識が高まり、約20年前から広瀬川の清掃活動等を始めました。また約10年前からは「エコにこマイスター(仙台市環境配慮事業所)」の認定も受け、ごみ減量に配慮した企業活動に取り組んできました。

2018年頃、お取引先の保険会社が災害備蓄品を入れ替えする時に食品をどう処分するのか気になり伺ったところ、社員に配分したり廃棄したりすると聞きました。これを有効活用できないかと思い、保険会社に交渉してその食品を寄贈していただき、福祉施設やフードバンク団体に寄付する活動を始めました。

2020年になると仙台市がフードドライブ事業を始めることになったのですが、市民から回収した食品をフードバンク団体に届ける事業者を探しているところフードバンク団体の「フードバンク仙台」さんからお声がけいただき、活動に協力することになりました。」

―運搬協力は御社が行うさまざまな社会貢献活動の一つなのですね。実際にはどのような活動を行っていますか?

菅原さん

「仙台市が、スーパーや百貨店など人の集まりやすい場所にフードドライブの食品回収ボックスを設置しています。私たちはそのボックスから寄付していただいた食品を回収し、フードバンク団体へ運搬しています。私は藤崎本館を担当していて、毎週金曜に回収して運搬を行っています。」

藤崎本館に設置しているフードドライブ回収ボックス。青葉通側入口付近に設置しています。

―実際に運搬をしてみて、どんなことを感じていますか?

菅原さん

「回収ボックスが設置されているのはスーパーや百貨店で、施設によっては入退館の管理や回収物の記録の確認がしっかりしています。ですから“仕事のついでにちょっと立ち寄っていこう”というスタンスではなく、1日のスケジュールにしっかり組み込んで仕事との両立を図っています。回収ボックスには、本当にたくさんの食品が入っていますよ。回収日の前に、設置先の方から「回収ボックスがいっぱいなので取りに来てください!」と連絡が入る時もあるほどです。」

回収ボックスに寄付された食品を回収し、その日のうちにフードバンク団体に運搬します。

―回収ボックスにはどのような食品が入っていますか?

菅原さん

「缶詰や調味料、ギフトセット、お菓子にお米といろいろですね。賞味期限が近いものが入っているので、食品ロス削減の観点でとても有効だなと感じています。一方で、食べ物に困っている方のためにと、わざわざ食品を買って置いていく方もいらっしゃるんですよ。藤崎さんの地下でいっぱいお菓子を買ってくださって、その買い物袋に“頑張ってね”などのメッセージを書いて回収ボックスに入れてくださる方もいらっしゃいます。」

回収された食品の一部。寄付してくれた方々の「モッタイナイを減らしたい」「困っている人を支援したい」
そんな気持ちも一緒にフードバンク団体に届けます。

菅原さん

「実際に個人の方がフードバンク団体に食品を寄付しようと思っても、一般の方はまずその団体の拠点がどこにあるか分からない方が多いと思いますし、そこに直接持っていくのもハードルが高い。だから人が集まりやすい場所に回収ボックスを設置するのは、支援のハードルが下がってとてもいいなと思っています。」

―フードドライブ活動は、個人の方の社会貢献活動を担う一面もあるんですね。運搬協力はやりがいのある取り組みだと感じました。

菅原さん

「ボランティアの基本は、自分ができることを見つけて、けれども無理せず、しかし長く続けることだと思っています。社員にも社会に貢献することの意義を少しでも感じてもらえればいいなと思うし、私たちの活動に気がついて、協力してくれる先が少しでも広がればと思っています。」

(左)回収した食品を段ボールにまとめ、
「フードバンク仙台」に運搬します。

(右)「フードバンク仙台」では、食品提供の依頼を受けた方の家族構成や状況に応じた食品を届けています。

―支援の輪が広がった事例はありますか?

菅原さん

「運搬協力のきっかけになった災害備蓄品の寄付は、さまざまなお取引先のご厚意でたくさんいただけるようになりました。また、私たちの活動のことをご存じになった近所の飲食店からお声がけいただき、定期的に食品を寄付していただけるようになりました。他にも、お取引のある食品メーカーのにしき食品様から、パッケージデザイン変更に伴って販売できなくなった旧パッケージの商品を寄贈していただけるようになりました。運搬に車が必要になり取引先のレンタカー会社にレンタルを依頼したところ、“そういうことなら”と無償でレンタカーや運転手を提供していただいたこともあります。こういった輪がどんどん広がっていけばいいですね。」

寄贈されたレトルト食品は、支援を受けた方から大変喜ばれているそうです。

菅原さん

「「フードバンク仙台」さんの活動報告書には、活動内容の報告や食べ物を支援した方の声が掲載されています。それを読むと、明日の食べ物に困っている人の悲痛な声が胸に迫ります。私自身、この活動をやっていてよかったと思うし、これからも身の丈に合った活動を長く続けていきたいと思っています。」

取材協力:

有限会社 宮城中央保険

ほかにも多くの運搬協力事業者の方々にご協力いただいています。(敬称略)

日本たばこ産業株式会社

株式会社パソナ

一般社団法人アート・インクルージョン

BTM株式会社

リコージャパン株式会社

社会福祉法人つどいの家

東急リバブル株式会社

社会福祉法人あおぞら

明治安田生命保険相互会社

宮城ダイハツ販売株式会社