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未利用魚を有効活用。高校生考案の「フィッシュバーガー」が誕生!
商品化されにくかった魚が、高校生のアイディアで高付加価値商品に
水産業を基幹産業とする塩竈市では、ある課題を抱えています。それは、水揚げされた魚の一部が商品化されない、あるいは商品化されにくいことです。その一例を挙げてみましょう。
塩竈市の沖合にある浦戸諸島では、地元の漁師によって刺し網漁が行われています。刺し網漁は海中に帯状の網を仕掛け、網の目に魚を絡ませて獲る方法で、浦戸諸島ではさまざまな種類の魚を漁獲しています。
網の目に魚が刺さるようにして獲れるため、水揚げされた魚の一部は網で傷つき、ウロコがはがれたりヒレや尾が欠けたりするものも出てきます。そうした魚は、鮮度や品質に問題はないにも関わらず、見た目が悪いため魚市場のせりでは買い手がつかなかったり、安い値段でせり落とされたりしてしまいます。また、その年によって水揚げ量が極端に増減する魚種もあり、量が安定しないため市場ではなかなか買い手がつきにくくなります。こうした理由で商品化に結びつきにくい魚は「未利用魚・低利用魚」と呼ばれています。
大切な塩竈の水産資源を余すところなく有効活用するには‥。その解決策のひとつとして、塩釜高等学校の生徒が未利用魚を使った「フィッシュバーガー」を考案しました。
たくさんの工夫と学びがあった、生徒たちのフィッシュバーガープロジェクト
2022年度に実施されたこのプロジェクト。取り組んだのは、当時、塩釜高等学校普通科でフードデザインの授業を選択していた29名の生徒たち。さらに未利用魚・低利用魚の活用に力を入れてきた商工会議所や水産加工業、飲食店など、産官学が連携して進められました。
「年度初めの4月から、生徒との検討が始まりました。フードデザインの授業で、浦戸諸島の刺し網漁のことや未利用魚・低利用魚のこと、それらを活用して塩竈ならではの食べ物として商品開発してほしいことを話しました」と、塩釜商工会議所の越後宏さんは当時を振り返ります。
検討会では、実際に未利用魚となったタラのフライを試食した生徒たち。地元の海で獲れた鮮度の良いタラをすぐにフライにしただけあって、とてもおいしいと大好評!開発するメニューは、高校生にもなじみのあるタラのフィッシュバーガーに決定しました。
バンズや具材、ソースなど、さまざまな方面からフィッシュバーガーの内容を考えた生徒たち。その誰もが、試食の時に食べたタラのおいしさをしっかり伝えることを念頭に置いて考えていたそうです。
生徒たちは、高校生ならではの柔軟な発想で、たくさんのフィッシュバーガーを考えました。その中から14種類に絞り込み、10月の選考会に臨みました。プロジェクトで連携する大人たちの前で、生徒たちは自信作を堂々とプレゼン。その結果、最終的に3種類のフィッシュバーガーを具現化することに決まりました。
黒糖バンズに梅ペーストが入ったタルタルソースと干しエビ、揚げネギがアクセントの「パワフルタラバーガー」。
うなぎのタレとベーコン入りホワイトソースのマッチングが楽しい「たらこっぺ」。
タラフライを3段重ねながらも、甘酢ソースでさっぱりいただける「たらふく食べて元気アゲアゲ!鱈フライバーガー」。
ネーミングも内容も独創的!生徒たちが考案したレシピは地元の割烹の料理人や料理教室の先生によって再現され、実際の試食では高い評価が得られました。
プロジェクトに関わった生徒にも大人にも、さまざまな収穫がありました
今回のプロジェクトを通して、地元の産業のこと、食べ物を大切にすること、メニューを企画する楽しさなどを学んだ生徒たち。
フードデザインの授業を受け持つ佐藤智子先生は、当時の生徒たちの様子についてこう語ります。「これまでごみの分別の経験がなかったのか、生徒たちは調理室の三角コーナーに生ごみ、プラスチック、紙など何でも入れて大量に廃棄していました。でもこのプロジェクトを経験してからは、三角コーナーには卵の殻と野菜の切れ端だけで他の食材は全部使い切り、分別もしっかりできていました。食品ロスを学んで、自分はどう行動すればよいか、考えることができるようになったと感じました」。
また今回のプロジェクトが終わった後には、試食や試作等でタラを提供した水産加工会社「マルサン松並商店」の松並理恵社長のもとに、生徒それぞれから感謝の手紙が送られてきたそうです。「プロジェクトを通して生徒との交流ができました。最終のプレゼンは、どれも生徒の思いと頑張りがすごく伝わった内容でしたね。生徒たちから手紙をもらった時は、涙が出ました」と、生徒たちとの思い出も話してくれました。
生徒たちが考案したフィッシュバーガーは、現在実際の販売に向けて価格設定やオペレーションなどを検討中とのこと。実際に食べられる日が待ち遠しいですね!