2022.10.4
シンプルで機能的なデザインと品質の良いオリジナルアイテムを、7,000品目以上展開するライフスタイルブランド『無印良品』。食品や文具、家具など生活に欠かせないアイテムが、私たちの暮らしを心地良く彩ってくれます。
ブランド誕生から20年以上愛され続ける『無印良品』ですが、実は販売しているアイテムを、時代に合わせて随時リニューアルしているのをご存じですか?
たとえば昨年、お茶やジュースなどのドリンク類のパッケージ中身が、ペットボトルからアルミ缶に変わりました。インナーや靴下など衣料品の包装や陳列用フックは、徐々にプラスチック製から再生紙製に切り替えられています。また店頭に足を運べば、使用済プラスチック容器や不要になった衣料品の回収ボックスが備えられています。
これらはほんの一例で、『無印良品』は地球環境に配慮したものづくりをブランド誕生当初から徹底して行い、随時改良を施してきました。そこで今回は『無印良品』のものづくりのコンセプトをはじめ、プラスチックやごみの削減に貢献する具体的な取り組みについて、『無印良品 仙台ロフト』の上野力店長にお話をうかがいました。
―――『無印良品』が生まれた背景や、ものづくりのコンセプトについて教えてください。
上野さん
「『無印良品』が誕生した1980年頃は大量生産・大量消費の時代で、商品そのものの価値ではなく、ブランド名や流行に左右されていました。そうした消費社会へのアンチテーゼとして生まれたのが『無印良品』です。「わけあって、安い。」をキャッチコピーに、割れてしまった干し椎茸など従来の商品の規格から少し外れてしまうような商品の企画からスタートしました。」
―――無印良品の商品開発とは、どういうものですか?
上野さん
「『無印良品』のものづくりの基本には3つの視点があって、私たちは“3つのわけ”と呼んでいます。1つめは「素材の選択」です。規格外で捨てられてしまうものや、業務用の素材などを活用しています。2つめは「工程の点検」です。商品の品質を保ちながら、素材を無駄なく活かし、コストダウンにつなげるなどの視点で作業工程を常時見直しています。3つめは「包装の簡略化」です。たとえばレトルトカレーは、パウチパッケージに商品名やバーコードなどを印刷してそのまま販売しています。化粧箱を使わない分、ごみを減らすことができます。」
―――地球環境や社会のために、という理念を1980年からずっと実践されてきたのは先見の明があったのでしょうね。では、プラスチック使用削減の推進やごみ減量に向けて、具体的に取り組まれたことを教えていただけますか?
上野さん
「近年ですと、2020年にプラスチック製ショッピングバッグの使用を廃止しました。現在は紙製のショッピングバッグのみ提供していて、今年9月からはマイバッグ推進のために紙製ショッピングバッグも有料とさせていただきました。」
―――マイバッグを持ってお買い物に来られるお客さまはどれぐらいいらっしゃいますか?
上野さん
「だいたい7割ぐらいはマイバッグを持ってこられるので、お客様自身もごみの削減に対して意識を高く持っていらっしゃると感じます。店頭ではオーガニックコットンやジュート製のマイバッグも販売していて、マイバッグの使用促進につなげています。」
―――大きな商品の購入やまとめ買いの時は、大きなサイズのショッピングバッグを利用することもできますね。
上野さん
「再生ポリプロピレン製のシェアバッグをデポジット(預かり金)150円で利用していただき、不要になったらお近くの店頭に持ってきていただければデポジットをお戻しする仕組みです。シェアバッグは消毒して再利用しているので、こちらもごみの削減につながりますね。加えて、MUJI passport会員の方向けに、ショッピングバッグを辞退された方に「ごみゼロ」にちなんで530マイルをプレゼントしています。」
―――マイバッグ推進だけでも、さまざまな方向性の取り組みを実践されているのですね。
上野さん
「2020年は、プラスチック製レジ袋の廃止のほかに別な取り組みも始めました。店頭に無料の給水機を設置していて、マイボトルをご持参いただければ誰でも気軽に水をくむことができます。マイボトルがない方のために、給水機でも使える「自分で詰める水のボトル」や保温・保冷マグの販売も行っています。」
―――PETボトル入り飲料を買うかわりに給水機を利用すれば、PETボトル廃棄の削減につながりますね。
上野さん
「はい。この取り組みはアプリ「水-MUJI Life」とも連動していて、ご自身の給水量や給水することで削減できるPETボトルの廃棄量などをリアルタイムで見ることができます。現在は500mlのPETボトル約35万本の削減効果があったと記されています。」
―――楽しみながらごみ減量に取り組める仕組みですね。
上野さん
「PETボトルといえば、昨年、PETボトル入り飲料をすべて循環型資源のアルミ素材に切り替えました。アルミ缶の国内のリサイクル率は約98%で、遮光性が高いことから賞味期限が長くなってフードロスの削減にも貢献できると考えています。」
―――御社が販売するPETボトル入り飲料はゼロになったのですね。ほかにも、プラスチックごみを減らす取り組みはありますか?
上野さん
「一部商品ですが、衣料品のインナーなどのパッケージはプラスチック製から紙製に切り替わりました。商品につけるタグや陳列用のフックなども紙製ですね。」
上野さん
「ほかにも、化粧水などの使用済プラスチック容器の回収や、そもそもプラスチック容器の厚みを薄くする取り組みなども進められています。プラスチック以外にも、ごみの削減に貢献する取り組みも行っております。」
―――それはどんな取り組みですか?
上野さん
「衣料品の分野では、2015年から“ReMUJI”という取り組みを始めました。お客さまが愛用していた『無印良品』の服や布類を回収し、まだ着られる服は染め直してお求めやすい価格で販売しています。
また、2021年からは家具の月額定額サービスを始めました。学生や単身赴任の方などは、一人暮らしをする時に家具を揃えますが、必要な時期が過ぎたら使用期間が短くてもその家具を手放さなければなりません。家具を廃棄するのはコストもかかるし、そもそも資源を無駄にしてしまいます。そこで使用期間を自分で決めて、不要になったらまたその家具を循環させて粗大ごみを減らそうとする取り組みです。」
――あらゆる商品、あらゆるジャンルに環境配慮の視点が行き届いているのですね。新しい取り組みや既存の取り組みの見直しなど、環境配慮のための施策はすみずみまで行き届いているように感じるのですが、そうした取り組みを企画・実施する専門の部署はあるのですか?
上野さん
「商品開発では商品部、再生素材原料は産地開発部、など様々な部署がかかわっています。また、企業全体で、各部と連携しつつサスティナビリティ・ESGにかかる取り組みを推進する部署もあります。私は販売部に所属していますが、商品開発についても意見を出すこともできます。本部もその声に真摯に耳を傾けてくれるので私たちもやりがいを感じますし、会社のこと、社会のことをますます考えるようにもなりますね。」
―――企業の理念が社員に息づいていることが、取り組みを推進するうえで一番肝心なのかもしれません。『無印良品』はこれからも、環境や社会にやさしいものづくりをされていくのでしょうね。
上野さん
「今までもそうでしたが、今後も最適な取り組みかどうかを常に見直して、時代に合わせて変化していくことが大切だと考えています。」